(海外旅行)別のシーフードレストラン編
それにしても少しばかり疲れた。
昨夜港に着いたのは夜の九時過ぎである。
強行軍であった。
コンドミニアムの前までバスで送ってもらい、それから屋台村で食事をした。
もうすっかり屋台村は慣れっこである。
いつものようにまずカンビールを注文し、それからゆっくりとおいしそうなものを捜し歩く。
まだ食べていない食材が山ほどあり、これは(今度来る機会にとっておこう)と腹を満たす程度の焼きうどんをかきこみ、早く休みたいので部屋に戻ることにした。
早いものでいつの間にやら滞在日数の3分の2ほどが過ぎた。
あくる日、今夜はかねてお目当ての先日とは別の(シーフードレストランに行くことにしよう)と、その日は本でも読みながら過ごすことにした。
読みたいと思って日本から持ち込んだ“浅田次郎の蒼穹の昴”は分量があり、時間がたっぷりあるこのような境遇にはうってつけだ。
買い置きしたまま二年になる。
おかげでなんとか読破することが出来た。
(たまには一人になるのもいいな)などと勝手なことを考えながらそれでも本に没頭した。
昼は冷蔵庫の中の果物とサンドイッチで軽く済ませ、となりのスーパーで少しばかりの買い物と両替をし、いよいよ本日のイベントのシーフードレストランである。
《シーフードの看板があざやか》
一人でフラリと入って座る席があるのか、注文は問題なく出来るのか、そして何を食べるのか、少しばかり緊張するとともにワクワクと楽しみでもある。
宿泊していたコンドミニアムは日本での説明どおりいたって便利なところにある。
すぐとなりには大きくて綺麗なスーパー、そしてその先には屋台村、さらに少し行くと残念ながら入れなかった先日のシーフードレストランと、生活に困ることはない。
今夜のレストランは海岸沿いにあり、先日のレストランとはコンドミニアムを挟んで反対側、歩いて五分ほどである。
コンドミニアムはエレベーターが遅すぎるなど少し古いところが難点だが、部屋は広く開放的でセキュリティーもしっかりしており立地条件がいい。
ペナンは車社会なので、車を持っている人は生活圏が多少遠くてもあまり問題なく、郊外の環境の良いところに住んでいる。
ロングステイに来る人は足がないので立地条件が重要であり、おそらくこの点を重視したのであろう。
また、オートバイの多いのにも驚くがこれらを考慮すると納得できる。
走り去る車や人々などを見ながらゆったりとレストランのほうに歩いていくと・・・・。
・・・・見えてきたレストランの看板が。
大きなネオンを掲げ、美味しいシーフードがあると見せびらかすように・・・・。
《水槽の中にはたくさんの魚が・・・・》
昼間垣間見たときには人の影はまばらであったが夜はまるで違っていた。
いくつもある大きな丸いテーブルが人で埋まっている。
この前のレストランより通路が狭く、テーブルとテーブルの間を行くのも大変でぶつかりそうである。
(座れるのかなぁ)と心配しながら奥のほうに進む。
奥の壁際のほうを見ると水槽がずらりと並んでおり、人々がなにやら物色するように魚を見ている。
(食卓に乗せる魚を選んでいるのか?)などと考えながらさらに奥のほうに進み、やっと一つ空いている席を見つけ、そこに座っていた一人の女性に・・・・。
「座っていいか?」と聞くと。
「リザーブしている」とのこと。
そうか予約済みか、こんな大きなテーブルに一人で座るのも(気が引けるし、まぁいいか)と考えながら他に席を探すが・・・・。
・・・・空いてない。
(今日もやはりシーフードにあり付けないのか)となおも見渡す。
だがやはりどこにも空いている席はなさそうだ。
誰かいないかと店内を見渡すと・・・・。
いるいるウエイターもウエイトレスもたくさんいる、が、みな忙しそうで話すチャンスなんてなさそうだ。
諦めかけたが(ままよっ、ダメでもともと)と一番近くにいるウエイトレスの客の対応が終わるのを待って・・・・。
「一人だが食事できるか?」と聞いてみた・・・・。
だが今度はすぐに「あそこに座れ」と指し示したではないか。
《思いの他》
その方向を見ると、レストランの端の方の駐車場の脇だが、四人用のテーブルが確かに空いている。
同じようなテーブルがいくつか並んでおり、少人数の子供連れの家族が食事している。
(おっ、あそこなら)とウエイトレスに「OK」と応え、なんとか席にはありつけた。
店は混んでおり見たところ日本人はいない。
ましてや一人で食べてる日本人なんて・・・・。
(とにかくこれで座ることは出来た、あとは何を口に入れるかだ)と注文を聞きに来るのを待った。
先ほどのウエイトレスがほどなく注文をとりに来、「オーダーの仕方がよく判らず教えてほしい」と頼むと親切にいろいろ教えてくれた。
メニューを見ながら「この豆腐とシーフードの旨煮料理とそれからチャーハンみたいなのをそれぞれ一つづつ、小さい皿で、それとビールね」と伝えるとなにやら言っている。
またどうせ(大きいビールにするか小さいのにするか)と聞いているんだろうと勝手に解釈し・・・・。
となりで飲んでいるビールを指差し「あれと同じ大きいビールをくれ」と言った。
・・・・だがなおも何か言っている。
それがよく解らず何度も聞き返し、最後に(料理担当の係りと飲み物担当は違う)と理解できた。
(そうなんだ、ふぅ、これでやっと注文が出来た)とほっとする。
つたない英語でこまごまと聞きながら注文したが、ほぼ思い通りの品物が出てきた。
ムッとするほどではないが外は暑く、そのためかどのレストランも仕切りの壁もガラスも無く、みなオープンである。
海岸沿いを走る車の向こうはもう海で、紺色の空間が広がっている。
ときおり物売りが来るが無視した。
となりの席ではなにやら活きの良さそうなシーフードの大皿をいくつも並べ、ビールやワインを飲みながら楽しそうに談笑していたり、反対側の子供連れの家族も静かに、だが楽しそうに食事しており、一人でちと寂しい気分になったが、それでも店の雰囲気を味わいながら食事を楽しんだ。
懸命に言葉を駆使して注文した甲斐があり、豆腐とシーフードの旨煮みたいな料理は椎茸や野菜なども入って思いの他おいしく、チャーハンも米が少し固いくらいで味も良く、満足のいく晩餐であった。
だが食べる量は限られており、いろいろな惣菜を注文出来ないのが残念である。
今度来るときは(あの水槽の中のものを注文してみよう)と考え、ゆっくりと味わった。
充分満足し値段を聞くと、ビール込みで33RINGGIT(約1100円)で、これも大満足であった。
物価が安いのを実感する。
明日はみやげ物をゆっくり物色し、あさってはペナン最後の夜となる(チャイナタウンの旧正月のイベントに行こう)などと考えながらレストランをあとにした。
そぞろ歩きの顔に海風がさわやかである。
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