税務署
海外から帰国し二ヶ月も経つとどっぷりと日本の生活に浸かってしまう。
いつも行く蕎麦屋も床屋も映画館も、食べるものも友達もゴルフ場も、温泉も桜もスーパーも、みな住み慣れた我が環境だ。
裏の桜は今年もたくさんの花を着けてくれた。
雨の中の散り際のはかない美しさも惜しみなく見せてくれた。
花びらを一枚手に採ってじっくり見ても淡色過ぎてさほど美しいとも思わないのだが、あの淡い色の花が集まるとどうしてあのような美しさを生み出すのだろう。
あっという間に散ってしまうあの儚さがどうして人に感動を与えるんだろう。
もっと濃い色の花の集合体だったらけば過ぎて、日本人の心にあれほどの印象を残さないに違いない。
一ヶ月も二ヶ月も咲き続けていたら飽きてしまい、飲みながらの花見もきっと面白くなくなってしまうに違いない。
色淡くはかないからこそ日本人の心を捉えて離さない。
日本人の美の琴線を刺激するなにかが桜にはあるのだろう。
いや、世界の人々も最近ではどうやらこの感覚を覚えてしまったらしいが・・・・。
《愚かな人間》
季節の移ろいを肌に感じるこの時期は木々を見ているだけで心和むものだ。
蕾から満開へと移り変わる桜の花や、ポツンと芽を出し、あっという間に若草色の葉を生い茂らせるもみじやかえで、ときをかけて徐々に膨らみを増し、派手な花の予感と期待を抱かせる薔薇の蕾など、大地の息吹きを肌で感じることができる。
木々を吹き抜ける風の音や鳥のさえずり、屋根をたたく雨音、花の匂いと歩道に落ちる木陰、いやでも五感が働いてしまう。
草木は素直で扱いやすい。
手をかければかけるほど綺麗な花を咲かせてくれ、鮮やかな色合いを楽しませてくれる。
虫や病気に責められても抗うことの出来ないその弱点を理解し、愛おしむように優しく接してやれば必ず恩に報いてくれる。
だから自然は大切にしなければならない。
だから自然をおろそかにしてはならない。
きっとしっぺ返しを受けるだろう。
それに比べて人間の愚かなことよ!
いつもいつも利益を追い求めている。
いつもいつも愛を勝ち取ろうとやっきになっている。
だからいつも戦いを繰り返している。
いや、考えようによってはそれも自然の営みかもしれないが・・・・。
人間的な営みに目を戻すことにしよう。
《紙くず同然》
先日税務署へ行ったときのこと・・・・。
ゴルフ場の会員権が紙くず同然になってしまい、損金の申請をして還付を受けようと出掛けて行ったが、結局受けることが出来なかった。
知らなかった、といえばそれまでだがどうやら潰れてしまったゴルフ場の会員権は還付の対象にならないらしい。
税金は所得から各種の控除を差し引いて残った金額に課税されるのだが、その中に譲渡所得というものがある。
これは、例えば土地などを売買してもし利益が出た(買ったときの金額を売ったときの金額が上回った)ら、それは課税の対象となるというものだ。
逆に、売ったときの金額が買ったときより少なかったら、それは損しているのでもしその年に税金をたくさん納めていたら還付(税金が戻ってくる)が受けられる、というしくみである。
これは土地だけではなくゴルフ場の会員権などでも同様である。
バブルが弾けて会員権の値段が極端に安くなったので、あるいは潰れて紙くず同然になってしまったので還付を受けた人も多いことだろう。
裁判所に更正の申告をして赤字損金をチャラにするゴルフ場の姿勢も大いに問題があるが、それを安易に認めてしまう裁判所にも問題がある。
もうどこからもお金が出てこないので(しょうがない)ということなのであろうが、なけなしの金をはたいて買ったサラリーマンはたまったもんじゃない。
官吏に弱いサラリーマンは泣き寝入りである。
もちろん儲かった人もいるには違いないが多くの人は損しているはずだ。
どこかに文句を言いたいがどこにも言うところがない。
うまくしくんだものである。
ゴルフは所詮遊びなのでそれに掛けたお金は贅沢金というわけか・・・・。
いつもの“自己責任”というやつなんだろう。
だが、ゴルフが一生懸命働くサラリーマンの仕事のエネルギーになっていることも確かだ。
たいした運動ではないが体を動かす開放感や球を打つときの快感がある。
一瞬のうさをボールに込め、力一杯たたく気持ちよさは他では味わえない。
ゲームの相手に勝ち負けを求めないというところもあとくされがなくていいのかもしれない。
ゴルフをやらない人にはわからないだろうが・・・・。
でも所詮はその程度のものではあるのだが・・・・。
それはさておき還付の件だが、先日税務署へ行ったときのこと・・・・。
裁判所に更生申告しているゴルフ場の会員権が一枚あったので還付を受けようと申請すると・・・・、
「これは還付の対象にならない」との税務職員の言葉。
納得できず「なぜか?」との問いに・・・・、
「更生申告中の会員権は還付対象ではない」と前と同じ答え。
「それじゃ納得できない、ちゃんと説明してくれ」というと・・・・。
「譲渡所得は買った金額と売った金額の差額なので潰れた会員権は売ったことにはならない」との弁。
「だって売れないのに売った金額を示せって言ったってできる訳がない」というと・・・・。
「そういう決まりになっている」とのこと。
「潰れたんだから金額“0”で計算すればいいじゃないか」と食い下がる。
「決まりなんだからしょうがない」との一点張り。
「それじゃその決まりをみせてくれ」との態度には・・・・。
しぶしぶ税務関係の本を持ってきて「ここに書いてあります」と示した。
確かに書いてある、しかも分厚い本の中にたったの一行“更生中のゴルフ場は対象としない”と・・・・。
そんなものじゃ納得できず「売れない会員権なのにどうしてそんな決まりがあるのだ」となおも食い下がると・・・・。
「とにかくそういう決まりです」との強気の姿勢。
ここら辺から少しばかり頭に血が上ってきた。
「あんたじゃ話にならないもっと偉いやつを呼んできてくれ」というと・・・・。
「私が対応します、とにかくダメなんです」と言ってきかない。
こちらも負けず「いいから偉いやつを呼んで来い」と怒鳴った。
しぶしぶそいつは奥のほうに消えて行った。
《続く》
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